むし歯とは
むし歯とは、ミュータンス菌が作る酸によって歯が溶ける病気です。初期段階では症状がないため、気づいたときには進行しているケースが少なくありません。進行度はC0~C4に分類されており、C1よりも進行したむし歯は自然に治らないため、歯科医院で治療が必要です。
日々のブラッシングでむし歯予防に努めるとともに、定期的に歯科医院で健診を受けることをおすすめします。
むし歯になる原因
むし歯は、次の3つの原因と「時間の経過」が重なることで発症します。
細菌(ミュータンス菌)
むし歯の原因となるミュータンス菌は、約1μm(マイクロメートル:1/1000mm)の細菌です。ミュータンス菌は、細菌の集合体である「歯垢(プラーク)」に含まれており、歯の表面に付着して糖質から酸を生み出します。
その酸によって、歯のカルシウムやリンが溶け出した状態がむし歯です。
糖質
ミュータンス菌は、食べ物に含まれる糖質(主に砂糖)から酸を生み出します。甘いキャンディーやチョコレートなどを頻繁に食べる人は、酸の影響を受ける時間が長いため、それだけむし歯のリスクが高いのです。
歯の質
歯を覆うエナメル質や象牙質などの状態によって、むし歯のリスクが異なります。乳歯や生えたばかりの永久歯は虫歯になりやすいため、特に注意が必要です。丈夫な歯質を維持するには、歯を構成するカルシウムやリンのほか、これらの成分の働きに必要なビタミンA・C・Dなどを十分に摂る必要があります。
むし歯になりやすい人の生活習慣
歯磨きが1日1回以下、間食やだらだら食べが多い、甘いものをよく食べる、歯科医院で定期健診を受けないなどの要因でむし歯のリスクが高まります。むし歯を防ぐには、口の中に糖分がある時間をできるだけ短くする必要があります。そのため、毎食後に歯磨きをすることや、間食やだらだら食べを避けることが重要なのです。
むし歯の進行と治療法
C0
むし歯の最も初期の段階です。歯が白く濁りますが、痛みはありません。溶け出した歯の成分が歯に戻る「再石灰化」を日々のブラッシングで促すことで改善が期待できます。また、歯科医院で予防治療を受けることも有効です。
C1
歯の表面を覆うエナメル質に穴が開いた状態です。むし歯になった部分は黒くなりますが、この段階でも痛みはありません。治療では、むし歯になったエナメル質を削り、コンポレットレジンというプラスチックを詰めて歯質を補います。
C2
エナメル質の下にある象牙質にむし歯が進行し、冷たいものや甘いものがしみるようになります。治療では、むし歯の部分を削り、詰め物で歯質を補います。
C3
象牙質のさらに内側にある歯髄(歯の神経)にむし歯が達した状態です。温かいものがしみるようになったり、何もしていなくても激しい痛みが起きたりします。治療では、歯の神経を取り除いて薬を詰めて密閉する「根管治療」を行います。
C4
歯の根までむし歯が進行した状態で、歯の露出している部分のほとんどが崩壊しています。多くの場合は抜歯が必要です。抜歯後は、入れ歯やブリッジ、インプラントなどで歯を補います。
当院のむし歯治療
なるべく痛くない治療
むし歯治療では、むし歯に汚染された歯を削る必要があります。歯を削るときには痛みが起きるため、歯科治療に苦手意識を持つ方が少なくありません。当院では、できるだけ痛みを抑えた治療を心がけております。
ドッグベストセメント法を導入
従来のむし歯治療では、むし歯の部分を削ることが一般的です。しかし、天然の歯は一度削ると二度と元には戻りません。そのため、削る範囲を最小限にとどめることが求められています。そこで注目されているのがドッグベストセメント法です。
ドックベストセメント法は、むし歯の一部を残してミネラルで無菌化する治療法のため、削る量を最小限に留めることができます。薬で治療するため、麻酔を使用したり神経を取り除いたりする必要もありません。
ドックベストセメントの
メリット
- 最小限の切削で済むため痛みが少ない
- 2~3回の治療で済む
- 子どもにも適用できる
- アレルギー性が低い薬剤を使用する
- 再石灰化を促せる
- 天然の歯質をより多く残せる
- 殺菌作用が長期間持続するためむし歯の再発リスクが低い
ドックベストセメントの
デメリット
- 自費診療のため治療費が比較的高い
- 重度のむし歯には適用できない場合がある
- 治療後のケアが不十分だと別の箇所にむし歯ができる可能性がある
- 治療後も定期健診が必要
- 初期のむし歯には適用できない
根管治療(歯の神経の治療)とは
根管治療とは、細菌によって汚染された歯の根(根管)の組織を取り除き、根管内を十分に殺菌・洗浄してから防腐剤を充填し、封鎖する治療法です。根管の形態や本数には個人差があるうえに、根の先が複雑に分岐しているケースもあるため、歯科医師には高い技術が求められます。
通院回数が多く、治療時間も長いことがデメリットですが、成功すれば抜歯を免れられる可能性があります。
根管治療の流れ
1歯の神経の除去
抜髄(ばつずい)といい、歯の神経を取り除く処置を行います。部分麻酔をしてから虫歯の部分を削るとともに、神経に被さる硬い歯質も削ります。次に、ファイルという特殊な器具で神経を取り除き、空洞になったところに薬を入れて仮蓋をします。最後に、時間を置いてから消毒をしたら、抜髄は完了です。
麻酔をするため強い痛みを感じる心配はありませんが、強い炎症が起きている場合は麻酔が効かなくなり、強い痛みを感じる可能性があります。
2根管を拡大
神経がない空洞となった根管を拡大して、薬を詰める範囲を確認します。根管の数は前歯が1~2本、奥歯が3~4本で、分岐した根管を全て確認する必要があります。根管は狭くて暗いため、歯科医師には高度な技術が求められます。根幹の拡大にかかる期間は基本的に1日ですが、出血がなかなか止まらなかったり、噛むと痛みが起きたりして数日に及ぶケースが少なくありません。
3根管の充填
根管に薬剤を充填したら、根管治療は完了です。根管の穴の大きさに合った根充材を使用しなければ、すき間から細菌が入り込む恐れがあるため、慎重な判断が求められます。
根管治療(歯の神経の治療)の注意点
根管治療は難易度が高いうえに治療回数が多いため、途中でやめてしまう方が少なくありません。しかし、そのまま放置すると根管内部でむし歯がさらに進行する恐れがあります。顎に細菌がまわり、さらには脳にまで達してしまうことで命に関わる可能性もあるでしょう。
少しでも異常がみられたら、できるだけ早く歯科医院を受診して、むし歯の進行度に応じた適切な治療を受けてください。
また、根管治療は歯科医師の技術が治療結果に反映されやすい治療といわれているため、根管治療の実績や最新の医療器具の有無などを意識して、歯科医院・歯科医師を選ぶことが大切です。根管治療に失敗すると、むし歯が再発して、さらに大きなトラブルに繋がる恐れがあります。
ご自身の歯を残し、日々の生活への支障を抑えるためにも、信頼できる歯科医師に相談しましょう。