1997年の米国歯周病学会誌に、2型糖尿病患者の歯周病を治療するとグリコヘモグロビン値が改善し、糖尿病がコントロールされるとの報告が初めて出されました。
それから10年の歳月を経て エビデンスは着実に積みあがっているようです。
以前から何度かお話していますが、糖尿病と歯周病には非常に密接な相互関係が働いています。 糖尿病で歯周病は悪化しますし、歯周病の治療が糖尿病の改善にも確実に作用します。
松田歯科クリニックで歯周内科治療を行っている糖尿病の患者様がいらっしゃいますが、本日も「歯茎の腫れもピタッと止まったし、体調もとても良くなりました」と喜んで話しておられました。
私は、現時点で最高の歯周病治療法は歯周内科治療であると確信しておりますし、糖尿病の患者様に是非試して頂きたいと思っています。
少しばかり難しくなりますが、歯周病が糖尿病を悪化させるプロセスを再度述べましょう。
歯周病は代表的な慢性炎症でありますから、歯周ポケット内には常にP.G菌やA.A菌などによる炎症反応が存在しています。 その炎症により、炎症性細胞からは 腫瘍壊死因子-α (TNF-α)を主体とするサイトカインと呼ばれるたんぱく質が産生されます。TNF-αは、インスリンの活性を干渉する働きがあるので、結果的に糖代謝が変化するのです。
つまり インシュリンが細胞の表面の受容体にくっつますと 健全な場合には糖を取り込むポンプが細胞表面に現れ,糖の取り込みを始めるのですが、TNF-αは その邪魔をして糖を取り込み辛くしているのです。
歯周病によって産生される炎症性物質が悪影響を与えているのは糖尿病だけではありません。
炎症性物質は炎症部分以外の正常な細胞も傷つけることになり、細胞のDNAを損傷させているわけですから 慢性的な損傷は多因子閾値説に基づき、突然変異からがん化を進ませることにもなるのです。
更に歯周病が 心疾患や動脈硬化の原因にも関係していることも判明しています。
たかが歯周病、されど歯周病 長生きしたいあなた まずは歯周内科治療を始めてみませんか!