むし歯の無痛治療に対する患者様からの問い合わせは 常に多いものです。なるべく痛くなく、短時間で治療を終わらせたい と思うのは当たり前のことなのでしょうが。
歯科治療の流れは確実に ミニマムインターベーション(最小侵襲治療)に向かっています。なるべく患者様に負担をかけない治療、その中での最善の治療というものを模索していかなければなりません。それは、インプラント治療においても歯周病治療においても同様ですが。
ある程度大きくなった むし歯の治療に対しては、私たち歯科医師が考えている以上に 患者さまは慎重な対応を欲しているのかもしれません。 経験上 歯の神経の方までむし歯になっているかどうかは分かるものですが、それでも可能な限り歯を削ることなく、可及的に神経を保存する努力が必要なのかもしれません。
それでは、むし歯に対するミニマムインターベーションとなる治療法には どのようなものがあるのでしょうか?
基本的に むし歯も歯槽膿漏と同様に細菌感染症です。従って むし歯菌を殺菌するアプローチの仕方により、幾つかの治療法に分けられます。
代表的なむし歯の神経温存治療法を下記にまとめてみましたので 今後の参考にして下さい。
ドックス ベスト保険適用外
銅イオン、銀イオンの殺菌力を利用した治療法です。
一般的に例として 銀イオンの殺菌能力はレジオネラ属菌を含む種々の細菌対策などに利用されています。銅イオンの殺菌能力は露天風呂の緑藻対策に利用されています。
また流し台の三角コーナーを銅製のものに換えると ぬめり(バイオフィルム=生物膜)が無くなります。これは銅イオンの殺菌作用、バイオフィルム破壊作用によるものです。
19世紀末、スイスの植物学者 Von Nageli が、 銅や銀の容器の中では緑藻が発生しないこと、またこれらの金属塩を少量加えた水も同じ効果を示すことに気付き、 この極微動作用をオリゴディナミーと呼びました。
ドックス ベスト治療においては、銅イオン、銀イオンを混入させたセメントをむし歯に直接塗布することによる オリゴディナミー効果 と 微量ミネラルによる象牙質の再生促進作用を期待する治療法です。
3mix-MP法 保険適用外
メトロニダゾール、ミノサイクリン、シプロフロキサシンの3種類の むし歯菌を殺菌する効果のある抗生物質をミックスして使用します。
抗生物質による殺菌作用と象牙質の再生促進作用を期待する治療法です。
ヒールオゾン治療 保険適用外
オゾンによる殺菌作用を期待する治療法です。
カリソルブ 保険適用外
カリソルブはスウェーデンで開発された虫歯を除去する塗り薬です。
カリソルブ溶液(次亜塩素酸ナトリウムと3種類のアミノ酸の混合溶液)の作用により、感染した象牙質のみを選択的に軟化させ、専用のインスツルメントを用いることで 軟化した感染部位のみの除去を期待する治療法です。
レーザー治療 保険適用外
虫歯の部分にエルビウム・ヤグ レーザーを照射し、虫歯を蒸散させることを期待する治療法です。
プレップスタート 保険適用外
酸化アルミナ粒子を高圧で噴射して 虫歯部分の無痛削除を期待する治療法です。
サホライド 保険適用
むし歯の進行止めとして一般的に用いられています。 銀イオンによる オリゴディナミー効果 と 象牙細管封鎖作用を期待する治療法です。
むし歯の部分が真っ黒くなるので お母さん達には不評ですが、お子さんのむし歯進行止めとして効果は大きいです。
どの治療法が最も効果的なのかは、色々な先生方のお立場を考慮すれば 明確な回答は避けなければなりませんし、判断ができるだけのエビデンスもないと思います。
参考までに 松田歯科クリニックにおいては 以前レーザーによるむし歯治療、プレップスタートによるむし歯治療を行っていましたが、現在は行っておりません。 ヒールオゾン治療に関しては今後もやる予定はありません。
私の所属するスタディグループである 国際歯周内科学研究会のI先生は「3mix-MP法やヒールオゾンよりドックスベストの方が効果的かもしれない」とおっしゃっていました。
私自身は検証しておりませんので 何とも言えないのですが、基本的にむし歯の治療はお子さんが中心となるわけですから、 治療の簡易さ、安全性、持続性、そして何よりも経済性という観点から選択するとすれば やはり ドックスベスト アリかな と思っています。